歴史的建築物所有者の皆様、大切に保存活用の取組を続けられてきた皆様、職人、建築家、まちづくり団体、先生方、行政の方々へ
歴史的建築物活用ネットワークは昨年(2013)9月に「歴史的建築物を活用し、後世に継承を図っていくこと」を目的に、長年保存活動を実践されてきた団体、専門家、そして制度の側面から積極的な支援を行ってきた自治体、新しく活用を通じて地域づくりや着地型観光を行おうとするまちづくり組織などが集い、国家戦略特区へ提案を行った任意の組織です。
同提案の大枠の骨子は
(1)各地の風土及びそれに伴った意匠・デザインを継承しながら、歴史的建築物の積極的な活用を図り、
(2)後世にその価値を自律的に引き継いでいくために
(3)全国一律のルールではなく、地域主体のルール・審査の仕組みを構築するというものでした。
この度、2014年3月28日に旅館業法に関しては国家戦略特区の地域指定がなされ、4月1日、建築基準法、消防法に関しては通知が発出され、歴史的建築物の活用に以下のとおり、新たな道筋が示されました。
1)国土交通省からの通知ー全国での実施が可能(地域が主体となった具体的な枠組みの提示)
各都道府県建築行政主務部長宛て、国土交通省住宅局建築指導課長「建築基準法第3条第1項第3号の規定の運用等について(技術的助言)
2)消防庁からの通知ー全国での実施が可能(地域が主体となった具体的な事例の蓄積支援)
各都道府県消防防災主管部長 東京消防庁・各指定都市消防庁宛て、消防庁予防課長「歴史的建築物に係る消防法施行令第32条の適用事例の報告等について(依頼)
3)旅館業法の特区指定緩和措置ー本件のみ特区指定、次の地域で実施が可能(東京圏、関西圏、兵庫県養父市、福岡市)
私たちの住む日本には、文化財への指定はされていなくとも、現在まで引き継がれてきた、土地の風土に根ざした、当時から蓄積されてきた生活や文化を体現した非常に優れた価値を持つ建物が多く残されています。
しかしながら、その修復や増築、用途を変更し活用する際などに、多額の費用や制度上の課題があること。根本問題として人口減少による過疎化。また、その一方で、都市化、高度化の開発など様々な同期的な要因が相まって年々、我が国の歴史的建築物は建て壊されたり、空き家となり手が入れられなくなっています。
そうした中、現存するそうした建物は、所有者の方、行政、まちの方々の手で大切に守られ、その継承にはこれまでとても多くの努力が重ねられてきました。当然、制度だけが課題もしくは足かせとなり、歴史的建築物を継承することが困難であったわけではなく、その継承の困難さの背景には、他にも社会経済、文化、環境の変化等の様々な要因が存在しています。
このような認識のもと、今後、わたしたちは今回の制度づくりの運動をひとつの契機とし、各地で丁寧に歴史的建築物を見直し、継承出来る具体的な仕組みを構築し、ひとつでも多くの大切にされてきた建築物が継受されるよう努力してまいります。
制度と社会経済・文化は同期しています。制度が優れれば、社会経済・文化も優れ、社会経済・文化が優れれば、制度も優れる。そのまた逆も然りです。
今回の制度改革は、地域で自然と歴史的建築物が継承されていく日常を求める多くの方々の賛同と、丁寧な活動を続けてこられた多くのまちづくり団体、政府、関係各省庁、先生方のご尽力によって実現しました。制度は開かれ、耕し続けられることで、わたしたちの暮らし(社会経済・文化)を豊かにします。
どうか引き続き、これからもご指導、ご支援の程、宜しくお願い致します。
事務局一同