国家戦略特区において、実現の方向で対応策を検討すべき 規制改革提案事項について

において「7.歴史的建築物の活用」の項目の記載がなされました。
(1) 古民家等の歴史的建築物の活用のための建築基準法の適用除外など
(2) 滞在施設等の旅館業法の適用除外

第36回全国町並みゼミ倉敷大会にて

9月20日(金)~22日(日)に開催され、のべ1200名の参加を得た第36回全国町並みゼミ倉敷大会の最終日、「歴史的建築物活用ネットワークによる国家戦略特区提案の決議」及び大会宣言の採択がなされました。

関係者の皆様方に厚く御礼申し上げます。

決議書はこちら

ご挨拶

日本の各地域には、地域固有の宝であり、共有資産である古民家や近代建築等の、いわゆる「歴史的建築物」(町家、武家屋敷、農家、庄屋、酒蔵場、銀行、医院、工場等)が存在し、その現存数はおよそ150万棟[1]あるとされています。

これらのうち、国等により重要文化財等の指定を受けたものについては、「保存」のための措置が講じられることになりますが、それ以外の「歴史的建築物」については、たとえその歴史的・文化的価値が高かったとしても、その活用が非常に困難な実態があります。結果、こうした「歴史的建築物」は大規模な解体・喪失[2]の危機に直面してきました。

一方、現在、若年層を中心に、このような歴史的・文化的な価値を有する歴史的建築物への関心が高まり、住居、宿泊施設、レストラン、カフェ、サテライトオフィス、芝居小屋、ギャラリー、物販、シェアハウス、福祉施設などとして積極的に保存・活用を図りたいというニーズが高まっています。

この度、昨年の特区提案が一定の結実を果たし、国より歴史的建築物活用の運用の新しい仕組みが示されました。わたしたちはこのような背景の下、各地で「歴史的建築物」の保存・活用の実例をつくり、その価値を次世代に承継する取組を全国に普及するための全国ネットワークとして、 自然と暮らしの循環を見つめ直し、歴史によって耕されてきた建築物に手をかけ続けることで、後世にその豊かさを継承することを目指してまいります。

皆様、今後とも引き続きご支援の程宜しくお願い致します。

事務局 一同

 

 

[1]昭和25年以前の木造住宅数。鉄骨、鉄筋コンクリート等を含む総数(近代建築も含んだ数値)は、およそ186万件(出典:総務省「平成20年住宅・土地統計調査」)。

[2]全体として、平成10年から20年の間に45万7千件の滅失(20%減少)(出典:総務省「平成10年住宅・土地統計調査」「平成20年住宅・土地統計調査」)。東京都台東区では1986年から1999年の間に31%減少、金沢市では1999年から2012年の間に30%減少、京都市では1986年から1999年の間に18%減少(京町家は年間1.6%ずつ滅失)、萩市では1998年から2004年の間に10%減少など(出典:2012年11月19日NHKクローズアップ現代)、文京区では平成10年から平成24年の間に50%減少(川口明代、「歴史的建造物の調査について」、平成24年)。

はじめに

古い建築物を探し出し、修理して使うこと。

日本の各地域には町家、武家屋敷、農家、庄屋、酒蔵場、銀行、工場等の「歴史的建築物」が残されています。こうした建築物はたとえ文化財指定のないものであっても、私たちの日常の風景であり、大切な技術と記憶を包含した地域の資源です。

しかしながら、現在、こうした建築物の多くが空き家化したり、相続に伴う解体等が進み、年々失われていっています。

地域にとって「歴史的建築物」はとても重要な文化の蓄積です。手をかけ続けることで、その価値を後世に引き継ぐことが出来ます。その土地に根ざし、洗練された職人(技能者)の伝統工法、森林の循環は、経済と文化の屹立に欠くことの出来ない大切なものです。

今般、たくさんのご縁、出会いが重なり紡がれ、政府の国家戦略特区に対し、全国35の自治体、16のまちづくり団体、5つの関係団体による「歴史的建築物」活用を目指した提案を行いました。

これまで古い建築物を大事にされ、活動されてきた方々、先達のとびばこの上に、今回、小さな一段を積みたい。その一歩の歩み、どうかご支援いただければ幸いです。

これからもよろしくお願いします。

私たちについて

歴史的建築物活用ネットワーク(0911)

歴史的建築物ネットワークは

35自治体、16中間組織(まちづくり会社等)、5関係団体からなります。(0911時点)

■構成員
35自治体
山形県鶴岡市
石川県金沢市
石川県加賀市
岐阜県高山市
岐阜県大野郡白川村
愛知県犬山市
滋賀県彦根市
京都府福知山市
京都府宮津市
京都府南丹市
京都府木津川市
京都府綴喜郡井手町
京都府綴喜郡宇治田原町
京都府相楽郡笠置町
京都府相楽郡和束町
京都府与謝郡伊根町
京都府与謝郡与謝野町
兵庫県豊岡市
兵庫県篠山市
兵庫県養父市
兵庫県朝来市
奈良県
奈良県奈良市
奈良県大和郡山市
奈良県橿原市
奈良県桜井市
奈良県五條市
奈良県御所市
奈良県宇陀市
奈良県高市郡明日香村
奈良県吉野郡吉野町
岡山県倉敷市
愛媛県内子町
福岡県八女市
福岡県太宰府市

5関係団体
全国ヘリテージマネージャーネットワーク協議会
日本伝統建築技術保存会
NPO法人全国町並み保存連盟
大和・町家バンクネットワーク協議会
一般社団法人奈良県建築士会
(歴史街道推進協議会)※調整中

16中間組織(まちづくり会社等)
古民家オーナーズコミュニティ有限責任事業組合《宮城県》
一般社団法人IORI倶楽部、株式会社明天《会津若松市》
株式会社マチヅクリ・ラボラトリー《栃木県》
株式会社地域協働推進機構《埼玉西部地域》
株式会社まちづクリエイティブ《松戸市》
コトラボ合同会社《横浜市、松山市》
株式会社地域交流センター企画《富山県》
おうみはちまん町家再生ネットワーク《近江八幡市》
一般社団法人ノオト《丹波、但馬、丹後》
NPO法人町なみ屋なみ研究所《篠山市》
NPO法人H2Oひめじ《兵庫県》
淡河かやぶき屋根保存会《神戸市》
NPO法人グリーンバレー《神山町》
株式会社石見銀山生活文化研究所《大田市》
一般社団法人ROOT

提案取りまとめ事務局
株式会社ジャパンエリアマネジメント

後藤治+オフィスビル総合研究所『都市の記憶を失う前に』白揚社新書

白揚社新書『都市の記憶を失う前に』後藤治+オフィスビル総合研究所

日本における多くの歴史的建築物はとても厳しい状況にあります。後藤は本書の中でその理由に関して、(1)国土の高度・効率的利用、(2)防災・安全への対策の課題を掲げ、歴史的建築物保全への具体的処方箋を論じています。

上記2つの公共性は、近代の日本、戦後とくに都市部の人口密度の高さの解消を目的に設定されたものです。人口減少時代を迎えた現在も尚、木造の低層建物× 鉄・コンクリートによる中高層建物○その大きな方向性は変わっておらず、そのための補助金の支給や低利融資等の公的資金の導入、税制優遇等の措置など各種事業が広く存在しています。

都市の記憶は、減価しない。むしろ、増価する。

その過程の中で、歴史的建築物をより柔軟に継ぐことのできるような法体系、ルールの設計と自然な実践な営みをつくりだす運動のデザインはどのようなものでしょうか。