ご挨拶

日本の各地域には、地域固有の宝であり、共有資産である古民家や近代建築等の、いわゆる「歴史的建築物」(町家、武家屋敷、農家、庄屋、酒蔵場、銀行、医院、工場等)が存在し、その現存数はおよそ150万棟[1]あるとされています。

これらのうち、国等により重要文化財等の指定を受けたものについては、「保存」のための措置が講じられることになりますが、それ以外の「歴史的建築物」については、たとえその歴史的・文化的価値が高かったとしても、その活用が非常に困難な実態があります。結果、こうした「歴史的建築物」は大規模な解体・喪失[2]の危機に直面してきました。

一方、現在、若年層を中心に、このような歴史的・文化的な価値を有する歴史的建築物への関心が高まり、住居、宿泊施設、レストラン、カフェ、サテライトオフィス、芝居小屋、ギャラリー、物販、シェアハウス、福祉施設などとして積極的に保存・活用を図りたいというニーズが高まっています。

この度、昨年の特区提案が一定の結実を果たし、国より歴史的建築物活用の運用の新しい仕組みが示されました。わたしたちはこのような背景の下、各地で「歴史的建築物」の保存・活用の実例をつくり、その価値を次世代に承継する取組を全国に普及するための全国ネットワークとして、 自然と暮らしの循環を見つめ直し、歴史によって耕されてきた建築物に手をかけ続けることで、後世にその豊かさを継承することを目指してまいります。

皆様、今後とも引き続きご支援の程宜しくお願い致します。

事務局 一同

 

 

[1]昭和25年以前の木造住宅数。鉄骨、鉄筋コンクリート等を含む総数(近代建築も含んだ数値)は、およそ186万件(出典:総務省「平成20年住宅・土地統計調査」)。

[2]全体として、平成10年から20年の間に45万7千件の滅失(20%減少)(出典:総務省「平成10年住宅・土地統計調査」「平成20年住宅・土地統計調査」)。東京都台東区では1986年から1999年の間に31%減少、金沢市では1999年から2012年の間に30%減少、京都市では1986年から1999年の間に18%減少(京町家は年間1.6%ずつ滅失)、萩市では1998年から2004年の間に10%減少など(出典:2012年11月19日NHKクローズアップ現代)、文京区では平成10年から平成24年の間に50%減少(川口明代、「歴史的建造物の調査について」、平成24年)。

はじめに

古い建築物を探し出し、修理して使うこと。

日本の各地域には町家、武家屋敷、農家、庄屋、酒蔵場、銀行、工場等の「歴史的建築物」が残されています。こうした建築物はたとえ文化財指定のないものであっても、私たちの日常の風景であり、大切な技術と記憶を包含した地域の資源です。

しかしながら、現在、こうした建築物の多くが空き家化したり、相続に伴う解体等が進み、年々失われていっています。

地域にとって「歴史的建築物」はとても重要な文化の蓄積です。手をかけ続けることで、その価値を後世に引き継ぐことが出来ます。その土地に根ざし、洗練された職人(技能者)の伝統工法、森林の循環は、経済と文化の屹立に欠くことの出来ない大切なものです。

今般、たくさんのご縁、出会いが重なり紡がれ、政府の国家戦略特区に対し、全国35の自治体、16のまちづくり団体、5つの関係団体による「歴史的建築物」活用を目指した提案を行いました。

これまで古い建築物を大事にされ、活動されてきた方々、先達のとびばこの上に、今回、小さな一段を積みたい。その一歩の歩み、どうかご支援いただければ幸いです。

これからもよろしくお願いします。